2020-03-20

イベント「様々な家族について考える」の覚え書き。#2


← イベント「様々な家族について考える」の覚え書き。#1 のつづき。

*看板を作る予算はないので、プロジェクタで映写していたイベントのタイトル画像。


 2月中旬。コロナウィルス感染症が深刻化し始める。実行委員会内でも情報収集が始まる。
 イベントもさし迫った2月26日、実行委員会の方針が決まる。

「飲食を伴うイベントではないこと、香川県にはまだ感染者が出ていないこと、県外から不特定多数の人が来るイベントではないことなどから、予定通りに開催する。ただし、体調不良の方は来場を控えてもらう。来場者には入り口で、手のアルコール消毒をしてもらう。また、三豊市内で感染者が出た場合は即刻中止にする。」

 市長が登壇できるかは直前まで判らないから、もし来れなかった場合はぼくがセクシュアリティについての基本講演をすることに。
 また、ろう者の方からイベントに参加したいとの申し出があり、ボランティアの手話通訳者を連れて来ていただけることになった。(手話通訳は、実行委員会でも最初に検討したものの、予算が捻出できず断念していた。)しかし、映像作品には字幕が付いていない。それで急遽、川田が日本語字幕をつけることになった。地味に大変な作業を黙々とやってくれた。

*映画の台詞を聞き取りながら、文字に起こす作業。字幕を入れるタイミングがまたむづかしい。

 前日2月28日の朝。登壇予定だったもう1組の原告カップル・まち&テレサが体調不良で参加を見合わせると連絡が入る。川田中家はふたりとも元気だったので、まち&テレサの体調不良は考えもしなかった。無理して来てもらうわけにもいかないので、ふたりにはお家で安静にしておいてくださいと返事をする。
 彼女たちの自己紹介がない分、プログラムには余裕ができるはずなので、急遽、川田中家のスライドを増量した。これまでの講演では触れていなかった「MIKANプロジェクト」のことや、新婚旅行を兼ねて行った英国旅行の写真などを追加する。


*友人がイベントのお祝いにくれたレインボーカラーのソープフラワー。

 2月29日、イベント当日。三豊市ではコロナウィルスの感染者報告もなく、何とかぶじに開催できそう。
 午前11時、大阪より三輪弁護士が詫間駅に到着。川田中家お気に入りのうどん屋さん「松ゆき」に連れて行く。まずそこで腹ごしらえ。
 ロビーで打ち合わせをしている間に午前12時。会場のセッテイングを開始。ホールのオペレーターさんと、ステージ上の機材セッティングを優先してやる。
 受付は、川田が所属するシアター・デザイン・カンパニーの植田さんにお願いした。イベント慣れしている人なので、ほとんど丸投げ。助かりました。
 午後1
時より数分遅れての開場。友人知人が多数来てくれた。
 じきに山下市長も会場入り。ノートパソコンの動作チェックをする。
 午後1時30分、佐藤倫子弁護士の司会でイベントがスタートする。マリフォー代表理事の三輪晃義弁護士から開会の挨拶。そしてそのまま、第1部の映画上映に移る。田中による上映作品の解説後、「フユノイエ」「エソラ」「ある家族の肖像」の順で上映。

*「フユノイエ」は、田中と川田がつきあい始めてちょうど1年経った頃に制作した作品。ふたりとも若い!

 「フユノイエ」は10分のサイレント映画。さすがに無音では何なので、これまでは雰囲気の合う既成曲を流したりしてお茶を濁していたのだけど、今回は大スクリーンということで、ほんとうに無音のまま上映することにした。ぼくは元々ラジオ局で働いていたので、放送事故を起こしてるようで何だか落ち着かない。 しかし今回、この作品の本質は無音なのだとやっと思えるようになった。「なぜサイレント映画にしたか」と言えば、冬のあたたかい室内を寒い屋外から覗き見ている感覚。それを表現したかったのだと改めて思う。

*「エソラ」は、田中初のドラマ作品。たくさんのスタッフと協働して作り上げた。

 「エソラ」は、ゲイの男の子がストレートの友人に恋をしてしまうというドラマ作品。三豊市内だけで撮影しようと考えていたくらい、地域密着の映画にしたかった。しかし、諸々の兼ね合いで、三豊市内で撮影するシーンは全体の約7割ほどに止まった。ただし、物語の主要なシーンは、詫間町にある友人の喫茶店LAZYBONESを舞台に撮影できたのでとても満足している。ある意味、凱旋上映。


*川田中家が訴訟に踏み出す4年も前に、同性婚の必要性を語っている。

 「ある家族の肖像」は、川田中家を追いかけたドキュメンタリー映画。友人の映像作家・松井蛙子さんの作品。例にもれず、この作品も三豊市内のいくつかの場所、丸亀市内のいくつかの場所で撮影された。まさにぼくらの日常がより近い距離から捉えられている。

*ここからの記録写真は、解放新聞の藤本篤哉さんにいただきました。

 さて、イベント当日のレポートに戻ろう。
 夕方のローカルニュースに間に合わないという理由で、イベント開始直後にいくつかのメディアから囲み取材を受ける。
 そうこうしているうちにプログラムの第2部、三豊市長・山下昭史さんによる講演が始まる。LGBTに関連した三豊市内の対応をおさらいしつつ、お話しいただく。


「多様性という部分で、誰もが当事者意識を持つということが重要。」
「よく啓発活動が先だという議論があるんですけど、そこではなくて、やっぱり我々は今、目の前で困っている市民がいる時に、その人たちにどうやって寄り添えるかということを考える。」
「当たり前のことを当たり前として捉える。そして、市民のひとりとして豊かに暮らせる。それが社会なんだということを、三豊市として実証したい。」


 川田中家は、2019年2月4日に婚姻届を提出して以来、三豊市と綿密なやりとりを重ねてきた。たちまち、三豊市人権課と顔合わせをした後に、2019年6月25日には市の職員や市議会議員に向けた講演会を担当した。そのうち告知ポスター制作のお話もいただき、その打ち合わせも何度かした。10月1日には「三豊市LGBT啓発講演会」の講師を務め、234人もの方にご来場いただいた。パートナーシップ制度の中身についてもヒアリングがあり、ぼくらの要望や意見をお伝えした。また、証明書や証明カードのデザインもオファーいただき、こちらも綿密なやりとりを重ねて制作した。それらの全行程には、たくさんの市職員さんが関わっている。


 山下市長はそんな職員さんたちも最大限ねぎらってくださった。
 左から、人権課の浮草課長さん、曽根さん、菅原さん、市民課の森課長さん。休日にも関わらず、ご来場くださってました。どうもありがとうございました。



 そして、第3部のトークセッションが始まる。
 冒頭に25分ほど、川田中家の自己紹介スライド。画像を出しながら、川田中家の12年間を一気にふり返る。



 マリフォー代表理事の三輪晃義弁護士と、三豊市在住でマリフォーのお手伝いをしていただいてる佐藤倫子弁護士から、パートナーシップ制度からさらに踏み込んだ同性婚についての話が展開される。



 まちさん&テレサさんカップルが不在のため、今回のタイトルでもある「様々な家族について考える」というテーマがすこし手薄になってしまった感があるので、すでに子どもを育てている同性カップルが居ることや、外国人と日本人の同性カップルでは配偶者ビザが下りない問題についてもすこし触れた。



 質疑応答では、近所に住む知人が素朴な疑問を投げかけてくれた。色々なところで報道されてるからそれくらいは知ってるだろうと思うことでも、やっぱり説明されないと判らないことがあるんだなあと。改めて、姿勢を正させてもらいました。 
 ばたばたとイベントが終わり、出演者で実働部隊でもある川田中家は来てくれた友人たちとの雑談もままならないまま、片づけに突入。挨拶すらできてない方もありました。この場で感謝を。どうもありがとうございました。
 来場者数は75人。当初の目標数にはまったく届かなかったものの、川田中家とダイレクトにつながっている友人・知人たちが聞いてくれたことは、何よりうれしかったです。
 この後、とある場所で交流会があったのですが、そちらについてはまた別の機会に。

 覚え書き、完了です。



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