2020-03-20

イベント「様々な家族について考える」の覚え書き。#1


*チラシ制作の前に作ったラフ。


 そもそもは2019年の院内集会の時、マリフォー理事の前園さんからイベント企画の打診があった。香川県三豊市で、同性婚の理解を深めるイベントをやれないかと。誰か有識者を呼んで講演会をするのはどうだろうと提案されたけど、地方では『超』がつく有名人が来ない限り人は集まらないんじゃないかというアドバイスをした。

「予算も限られていることだし、大阪原告の2組が集まってじっくりトークセッションをするのはどうですか?」

「ついでにぼくが手掛けた映像作品の上映会もくっつけましょうか?」

 この時すでに、イベントの骨格はできてたんじゃなかったかな?結果的に、川田中商会が完全プロデュース。チラシのデザインも自前ならば、上映作品もすべて川田中家に関連するものばかり。なんて安上がり!

「イベントの頃にはすでに三豊市でパートナーシップ宣誓制度が施行されているはず。ぼくらも1月早々に宣誓する予定だし、三豊市で話題になるとしたらむしろそっちなんじゃないかな?」

 というわけで、三豊市のパートナーシップ宣誓制度を記念するイベントと銘打って、後半に同性婚の必要性を語るというのでどうでしょうかということになった。

*院内集会に参加した時の様子。ハフポストの坪池記者がわざわざ組写真にして送って来やがった(笑)


 12月初旬、企画は実現に向けて動きだす。当初、3月終わり頃の開催を目指していたのだけど、もろもろの都合で1ヶ月早まって、2020年2月29日が開催日と決まる。
 とは言え、登壇予定の三輪弁護士も、まち&テレサカップルも県外在住。香川県にいる川田中家と佐藤弁護士ですべての段取りをしなくてはならない。
 会場は三豊市にある公共施設・マリンウェーブのマーガレットホールで開催することにした。ここは2019年10月、田中が三豊市のLGBT啓発講演会を行ったところだ。最大で700人が収容できる。ぼくの講演会には200人ほどの人が来てくれたので、今回はさらにそれを上回る数の人たちに聞いてほしいと考えていた。
 12月の終わりには三豊市長の山下昭史さんが講演してくださるかも、という朗報が届く。これは、願ったり叶ったり!
 1月初旬、企画書や予算書も完成。マリフォーからGOサインが出る。いよいよ、動きだす。

*三豊市長の山下昭史さんと面談中。


 2020年1月15日、佐藤弁護士と川田中家は山下市長と面談。イベントの企画書を見せながら、正式に登壇をお願いする。また、三豊市や三豊市教育委員会の後援も申請する。まもなく承認。
 今回は、後援をたくさん取ることにした。川田が動いて、特にメディア関係を中心に申請した。出したところはほぼ承認された。しかし、「香川県」と「香川県教育委員会」だけが不承認となった。
 特に、香川県から返ってきた不承認通知書には「同性婚については県民のコンセンサスが得られている状況とは言えない」という、よく解らない理由が記されていた。

……人権問題に県民のコンセンサス(意見の一致・合意)?

 ぼくらが訴えているのは、『憲法に保障されている「結婚の自由」がぼくらに適用されていないこと自体が人権侵害だ』ということ。その主旨を、まったく理解してもらえなかったということか?県民の合意が得られないと人権侵害も解消できないとする香川県の消極的な姿勢には心底がっかりした。

*三豊市の第1号カップルとなった川田中家のパートナーシップ宣誓。


 1月17日、愛犬つぶ5回目の誕生日。川田中家はついに三豊市庁舎で、パートナーシップ宣誓を行った。朝から多数のメディアが詰めかけ、三豊市の第1号カップルとして報道された。(三豊市パートナーシップ宣誓制度は1月1日から始まっていたので、「ぼくらよりも先に宣誓するカップルがいたら面白いのにね」とふたりで期待してたんだけど、残念ながらぼくらが第1号カップルだったようです。そういうの、川田中家はあんまりこだわらないので。)
 夜には、ぼくたちの新しいお家でちょっとしたお祝いパーティーをする。そこには、2月に三豊市でパートナーシップ宣誓を予定している友人カップルも駆けつけてくれた。ぼくらに続いてくれることが何よりうれしい。

*パーティの合間に撮ってもらった家族写真。


 2月の頭にチラシデザインが完成。3000枚を印刷して、それからは人海戦術。ぼくらがよく足を運ぶ地元の個人商店を中心に配布した。配布に関しては、たくさんの友人たちが協力してくれた。さすがに実行委員会だけでやるのは大変なので、とても助かりました。どうもありがとう。
 個人的には、毎日のように利用する近所のスーパーマーケット「PiCASO」の社長さんが配布を了承してくださったのがうれしかった。これからも毎日、利用させていただきます。

*たくさんの人たちが日常的に利用するお店でチラシを配布できるのはうれしい。


 そんなこんなしている間にも、ぼくと川田は県外での講演活動があったり、川田中商会の主催するイベントがあったりして多忙な日々を過ごしていた。
 2月7日には「結婚の自由をすべての人に」訴訟の第4回論弁期日も。この日は報告会の代わりにマリフォーの公式イベント「しゃべろう同性婚」があり、大阪市立大学都市経営研究科の准教授・新ヶ江章友さんによる興味深い講演があった。


 彼の話によると、子どもを育てている同性カップルは日本国内にもすでにたくさん居るそうだ。マリフォー東京原告のおのはるさんをはじめ、ぼくらの友人内にも1組居る。里親制度を利用して、子どもを養育しているゲイカップルも1組知っている。
 川田中家に関しては愛犬を育てることで満足していたけれど、婚姻という制度が同性カップルにも適用されて、ふたりで子どもの親権を持つことができ、なおかつ戸籍上も「家族」になれる制度がちゃんと整っていたら、『子育て』も現実的な選択肢として考えていたかもしれない。そんなことを漠然と思った。
 同性婚の話題が出るたび、「少子化を助長する!」とバカのひとつ覚えみたいな反論をする人が居るけど、少数者はどこまで行っても少数者なんだから、その数少ない人たちが子どもを持たない程度で少子化になるわけないよね。
 それに、「同性カップルが子どもを持てない」というのは『両者の血がつながった子ども』を持てないというだけで、養育できないというわけではない。児童養護施設に暮らす子どもと、マッチングできる制度が整備されていたら、引き取って養育しようとする同性カップルもそれなりに居るのではないかと思う。実際、養子縁組はできないにしても、同性カップルが里親制度を利用し、施設の子どもを一時的に養育するケースが日本国内でもすでにある。
 本気で少子化を心配しているなら、誰もが子どもを迎えられるよう制度の方を先に整えるべきだし、それ以前に、男女のカップルですら子どもを育てづらい環境に追いやられていることを改善する方が先だよね?保育園待機児童の問題やシングル家庭の貧困問題、義務教育にかかる費用や給食費の無償化、給付型の奨学金など、それらの問題には物申さないくせに、同性婚を求める人間には難癖をつけて少子化の責任転嫁をするんだから、ほんとにたちが悪い。
 いたいけな子どもたちが育児放棄や虐待に遭うニュースが流れ聞こえてくるたび、「そんなひどいことになるんだったらウチで面倒見るよ!」といつも思ってしまう。
 とにもかくにも、今回の「しゃべろう同性婚」はまたひとつ踏み込んだ内容だったんじゃないかな?

*三豊市ではじまったパートナーシップ宣誓制度について報告しているところ。


→ イベント「様々な家族について考える」の覚え書き。#2 につづきます。



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